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平安の秘仏ー滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち(東京国立博物館) [美術展]

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2016年9月13日(火)~12月11日(日)
東京国立博物館 本館特別5室

滋賀県甲賀市の古刹・櫟野寺の仏像がそろって東京国立博物館にいらっしゃいました。なにより秘仏の本尊・十一面観音菩薩坐像の大きさ(3メートル)に圧倒されます。滋賀から運んだなんて無謀なチャレンジ。でも、なんというかこの観音さまなら長距離の移動にも耐えられそう。何事にも動じない堂々とした態度で、どんな困難も乗り越えて、どこでもそれなりの仕事をこなしてくれる強靭な肉体と精神をお持ちの観音さまという印象です。

一般的に観音さまは女性的な優しいお姿と言われていますが、最近、それは違うんじゃないかという気がしてきました。8月にお会いした観音寺や聖林寺の十一面観音像も力強かったし、去年、ご開帳された観菩提寺の十一面観音像も美男子だったし、実証的には男性的な観音像が多いような気がします。今回の展覧会に一緒にいらっしゃったご本尊をとりまく仏像群もそろって釣り眼で厳しいお顔でした。「観音=女性的」という公式は一時保留にして、実際のお像にあたっていきたいと思います。


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ビアトリクス・ポター生誕150周年 ピーターラビット展(Bunkamura ザ・ミュージアム) [美術展]

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2016年8月9日(火)~10月11日(火)
Bunkamura ザ・ミュージアム

もちろんかわいいピーターラビットですが、それだけではないイギリス的な皮肉が効いていてびっくりしました。なんと、ピーターおとうさんは畑で事故にあってパイにされてしまったんですって。家系図のイラストもおとうさんはパイの絵でした…。なんてシュール。だからピーターのお家は子供4人(娘3人、息子1人)の母子家庭なんですね。おかあさんは内職家計をたてていますが、生活もなかなか大変そうです。

そんな生活ゆえか、ピーターが畑で悪さをして危機一髪のピンチになったときも、おかあさんは息子の無事を喜ぶより、なくしてしまった青い上着と靴を悔やんだりするのです。その後、ピーターは上着と靴を取り返すためにまた危険な畑に入り込みます。いつもは畑に入ってはいけない、と注意しているおかあさん。でも、そのときばかりはピーターが上着を取り返してきたので、息子を叱ることもなく上機嫌だったとか。“ちょっとちょっと”と思わずツッコミを入れたくなりました。でも正直なおかあさん、いいなぁ。まっとうで100%正しいおとぎ話より、よっぽどいい。そんなんで、予想外に面白かったです。


浮世絵 六大絵師の競演-春信・清長・歌麿・写楽・北斎・広重-(山種美術館) [美術展]

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2016年8月27日(土)〜9月29日(木)
山種美術館

六大絵師の中では私はダントツ「春信」押し。初々しさにあふれていて、一人だけ時代を越えてきます。今回は3点が出品されていましたが、「梅の枝折り」と「柿の実とり」の2点は“肩車の2人組が塀際の枝を折る”というほぼ同じ構図です。

この構図、“肩車のアンバランスな危うい体勢”プラス“人の家のものを盗る”という2つのハラハラが重なって、吊り橋効果バツグン。鈴木春信の描く人物像は中性的で性別がはっきりしないのですが、どうしたって恋の予感がしちゃいます。解説によると、着物や髪型から「梅の枝折り」は娘2人だそうですが、「柿の実とり」は若衆が娘を背負っているのですって。淡い初恋ですね…。いいなぁ。

そして、どこかで見覚えのある構図だなぁ~と思って考えてみると、ポンピドゥー・センター展にきていたシャガールの「ワイングラスを掲げる二人の肖像」でした。こちらはシャガールがベラとの結婚の喜びを描いた1枚。春信もシャガールも恋がしたくなる絵ですね。


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鈴木春信「梅の枝折り」

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鈴木春信「柿の実とり」

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マルク・シャガール「ワイングラスを掲げる二人の肖像」



木々との対話ー再生をめぐる5つの風景(東京都美術館) [美術展]

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2016年7月26日(火)~10月2日(日)
東京都美術館

ポンピドゥー・センター傑作展に行ったついでに寄ってみました。会場に入ったとたん、木の香りがむせかえるぐらいすごい。國安孝昌氏の巨大作品から漂ってきているようです。最近、木の家や家具も少なくなってなかなか嗅ぐこともないので、懐かしいにおいでした。きっとその昔、造りたての神社や寺院や仏像からも芳香がしていたのでしょうね。

人気だったのは、土屋仁応氏の動物彫刻。気味が悪いけれど惹かれるところがあります。須田悦弘氏の本物そっくりの草花の彫刻は見つけるのが楽しい。同じ木という素材を使いながら、表現されるものはそれぞれ個性的です。でも、やはり木の温かみみたいなものは底流に感じられました。


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縞猫(土屋仁応)


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バラ(須田悦弘)


ポンピドゥー・センター傑作展(東京都美術館) [美術展]

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2016年6月11日(土)~9月22日(木・祝)
東京都美術館

ポンピドゥーセンターはパリにあるフランスの国立近代美術館。そりゃあ、傑作ぞろいなはずです。展示構成は1906年から1977年までのタイムラインにそって1年ごとに1作家の1作品を紹介していき、フランスの20世紀美術を一望できるというユニークな趣旨でした。ロビー階が1934年まで、1階が1959年まで、2階が1977年までとなっています。主催者側の「見せ方」が意図的なので、展覧会自体がひとつのアート作品みたいでした。

そのフランスの20世紀美術ですが、50年代までは姿を変えながらも連続性が感じられ、パリがアートを牽引していたことがみてとれました。でも、2階(1960年以降)にくるともうお手上げ、やはり現代美術は訳が分かりません。ちなみに、展示の1番目1906年の作品はラウル・デュフィの「旗で飾られた通り」。日本は明治39年、岡倉天心が美術院の拠点を茨城県五浦に移した年です。最後の1977年はポンピドゥーセンターが開館した年で、作品はポンピドゥーセンターの模型。元号では昭和52年、東京芸術大学に大学院博士課程が新設された年になります。そう考えると70年って結構長くて、隔世の感ですね。作品が変わっていって、理解不能になるのもやむを得ないのかしら。印象派やキュビスムだって当時の人々には受け入れられなかったのだから、評価は変わっていくのかもしれません。


山中常盤(監督:羽田澄子、2004年) [映画]

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ドキュメンタリー作家 羽田澄子
2016年8月9日(火)~8月28日(日)
東京国立近代美術館フィルムセンター

岩佐又兵衛の「山中常盤物語絵巻」を映像化した羽田澄子監督の映画の上映が東京国立近代美術館フィルムセンターの小ホールでありました。羽田監督もいらしていて、90歳というお年とはとても思えないかくしゃくとしたご挨拶がありました。「山中常盤」の映像化にあたっては、辻惟雄先生に顔利きをしていただき、MOA美術館での撮影が許されたそうです。MOA美術館では宗教的な制限から過激な場面は展示されないため、全巻全場面の映像化は特に貴重とのことです。

映画は絵巻を単に映すだけでなく、ときどきに常盤御前役の女優さんがでてきて、京都から近江をゆく風景が映しだされたりと再現VTR風な部分があり、イメージしやすく演出されています。浄瑠璃も思った以上にちゃんと歌詞が聞き取れて、「物語」がすんなりと頭に入ってきました。いろんな効果があいまって、スクリーンに大写しになる又兵衛の絵にどんどん引き込まれていきます。絵巻の世界にどっぷりと浸かることができて、美術館でみるのとはまた違った体験でした。ぜひ、他の絵巻の映像も見てみたなぁ。東博のミュージアムシアターとかで企画してほしいです。


国宝十一面観音菩薩のはしご(観音寺から聖林寺へ) [寺・神社]

酷暑の夏の一日、よく比較される2躯の国宝十一面観音菩薩像をめぐりました。どちらも天平時代の木心乾漆造。黒光りしたひきしまった身体や四角いお顔がそっくりです。

最初に京田辺市の大御堂観音寺へ。三山木駅から1日6便しかないバスで「普賢寺」下車。人のいない参道を行くと小さなお寺のお堂に突き当たります。門前の個人宅のチャイムを鳴らすと住職さんが出てこられ、お厨子を開けて読経をしてくださいました。私一人のためにありがたいことです。当時のものは何も残っていないのに、この十一面観音様だけが目の前にあるってどれだけ貴重なことでしょう。それこそが観音様の霊験だなぁと思いながら、静かに手を合わせました。

バスで三山木駅に戻って寿宝寺へ。予約が必要なお寺ですが、ちょうど女性が母屋にいらっしゃり、十一面千手千眼観音立像のお堂を開けていただきました。この観音さまは昼と夜とではお顔が変わるとのことで、扉を閉めて夜の月夜を模したライトを当てると、あら不思議、男性的な厳しいお顔がとても慈悲深くて優しいお顔になります。狐につままれたようでした。

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午後は奈良から桜井駅に向かい、バスで山の中腹の聖林寺へ。ここでも下車したのは私だけ。十一面観音様は一段高い場所にあるお堂にいらっしゃいます。見上げるような堂々としたお姿。大神神社の神宮寺のご本尊だけあって、パワーを秘めてこうごうしい。奈良時代の仏像の完成形が極まってここにいらっしゃいます。

次のバスまで1時間ほど、奈良盆地をみわたす景色のいい本堂の縁側でぼーっとしていました。ご本尊はほのぼのとしたお地蔵さまだから、緊張することもありません。その間、拝観に来たのは2組だけ。ここでもお堂をひとりじめ。暑い夏のお寺巡りの特典です。

聖林寺から三輪山.jpg


タグ:国宝

忍性-救済に捧げた生涯-(奈良国立博物館) [美術展]

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平成28年7月23日(土)~平成28年9月19日(月・祝)
奈良国立博物館

トナカイみたいな大きな赤鼻の忍性上人像。はっきり言ってブサイクです。どうみても魅力には欠けるよなぁ…。頭が切れそうな感じじゃないし、気が回りそうにもないけど、態度は大きそう。人心をつかむような雰囲気はないし、いわゆる高僧って感じじゃありません。国立博物館の展覧会の「顔」になるには、ちょっと無理があるような気がします。なぜ、奈良博で忍性さんなんでしょう。その疑問も解けないままで消化不良。展示品にも集中できませんでした。まあ、それだけ忍性上人のルックスが強烈ということなのかもしれません。

でも、忍性上人がハンセン病患者を文殊菩薩の化身だとみてその救済を行っていた、というエピソードには考えさせられました。忍性さんの第一印象が良くなかったので、自らの救いのために他者を利するって、結局は自分のためなんじゃないかと、ちょっと意地悪な見方をしていたのです。でも、自分のためが他人のためにもなるならwin-winの関係です。自分を犠牲にして他者を助けることには限界があるし、どこか押しつけがましくなってしまいそう。忍性さんのやり方はそれをクリアしてくれます。かっこよくないからこそ理想を追い求めず、愚直な救済活動に身を捧げることができたのかもしれません。

それにしても、外見ってやっぱり大事です。これが鑑真和上や明恵上人や一遍上人のようにかっこよかったとしたら、一気に惹きつけられて、全く違う入れ込みようで鑑賞したと思います。忍性さん、ごめんなさいね。

オルセー美術館・オランジュリー美術館所蔵 ルノワール展(国立新美術館) [美術展]

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2016年4月27日(水)~ 8月22日(月)
国立新美術館

明るくて幸福感にあふれたルノワールの絵。人物画、それもほとんどが女性を描いたもので、モデルへの信愛の情が強く感じられます。セザンヌのリンゴやモネの睡蓮にあたるものがルノアールの女性なのかもしれませんが、私は人見知りだからか、ここまで恥ずかしげもなく女性との親密な関係を直視させられると、どうも居心地がよくありませんでした。

対照的な2人の女性がモデルの「田舎のダンス」と「都会のダンス」は、ルノアールの二股疑惑を想像させます。「田舎のダンス」の女性は好きな男性にとびきりの笑顔を無邪気に投げかけるのに対して、「都会のダンス」の女性はその心をそっと忍ばせてそっけないふりをする…。女性のことをよく観察して理解していなかったら、とても描き分けられるものではありません。2人のモデルは実在の女性で、実際、ルノワールは「田舎のダンス」の方の女性と結婚したんですって。

それにしても、ルノワールの絵はモデルの女性とのパーソナルスペースがとても近いです。時代が違っていたら、画家ではなく、グラビア写真家になっていたんじゃないかなぁ。


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「田舎のダンス」と「都会のダンス」


江戸絵画への視線-岩佐又兵衛から江戸琳派へ-(山種美術館) [美術展]

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2016年7月 2日(土)〜8月21日(日)
山種美術館

写真撮影OKのコーナーが設けられていました。私の大大大好きな酒井抱一「秋草鶉図」も撮影できました!山種美術館さん、ありがとうございます。


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お月さまは十日目ぐらいですかね。

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まるまるとした鶉(うずら)さんたち、なんだかお月さまと相似形ですね。

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ぼけぼけの写真ですが、鶉は本当に丁寧に描かれています。


福井県立美術館の岩佐又兵衛展では展示期間外だった「官女観菊図」も見ることができました。この後、福井に運ばれるようです。